第二話 奴らの目的

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  「これは一体……」    何かが分かるかもしれないと思って覗き込んだ僕の手のひらには、紋章のようなものが浮かび上がっていた。  青白く光り輝いているソレはまるで家紋のようで、いわゆる幾何学模様にも似た紋様が見て取れた。  ……ふと、一つの可能性に思い当たる。   「ハッ、印籠じゃあるまいし」    しかし思い返してみれば、腕を交差したとき手のひらは相手の方に向いていた。  つまり、これの効力によってこの現象が起きている可能性はある。  ならこれの正体は何なんだって話だが。    ――手相を上書きするように光り輝くソレの正体を探ろうと、いろんな角度から見ていたら、   「あっ、消えた」    光どころかその痕跡すら完全に消えてしまった。  時間制限でもあるのだろうか。  それとも、セーフモード的な何かなのだろうか。  いずれにせよ次に使用できるかが問題だが、試す方法にもいろいろと問題がある。   「右手を突き出して『動けッ!』ってか?」    それを誰に対して言えばいい?  奴にしても化物にしても動き出せば厄介だし、動かなければ取り越し苦労だし謎は増えるしでデメリットばかりが目立つ。  さらに、例えば連続して使えないみたいな制約があったとしたら、その瞬間にゲームオーバーだ。   「それに、早くしないとスドウたちが……」    場合によっては単身で突っ込むことも有りになるだろうが、最悪の場合無駄死にとなる。  それを避けるためにも、さっきの手のひらの紋様について深く知っておきたいところなのだが……    ……ハァ。と一度ため息を吐いてから。   「しょうがない。試すか」    そう覚悟を決めて、僕は取り敢えず化物の背後に回った。   「ここからなら、すぐに捕まるなんてことはないだろう」    一応、無駄にでかいこいつの死角になる位置だし、最悪の場合に隠れる用の遮蔽物も周囲にある。  ……まあ、本当に最悪なのは混乱したこいつにうっかり踏み潰されて死亡なので、そうはならないように気をつけよう。    ――周囲を見渡して、辺りに敵影がないことを確認。  そして、遠くの方に見える奴も動かないように、角度に気を払って腕を突き出して。   「動けッ!」    そう叫んだ。
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