第二話 奴らの目的

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 ――けれど、何も反応がない。   「あれ?」    傍目から見ればこんな非常時に中二行動を取る痛いやつに見えてしまうのかもしれないが、何も起きなければ文句一つ言えないじゃないか。  ……いや、そんなことより。   「光りさえしていない?」    僕の手のひらからはこれといって反応はなく、あの紋様の影も形もなかった。    ――ガクッと、膝をついて崩れ落ちる。   「そんな……アレが使えないとなると、僕は無力じゃないか」    やっと見えた希望。絶望の中から浮上できた理由。  それら全てが妄想に過ぎなかったとなれば、勘違いに過ぎなかったとなれば、落胆どころの話ではない。  警察ですらどうしようもなかった問題を解決する糸口だったのに、その糸は途中で切れてしまっていたというのか。  ……いや、それでも。   「諦めてたまるか……ッ」    せっかく掴んだ希望だ。藁どころか釣り糸にすら縋り付いてやる。  何かの罠だっとしても、全てが徒労に終わるとしても、後悔だけはしたくないから。   「考えろ。さっきと違う状況は何だ? 考えられる条件とは一体何だ?」    両膝をついたまま、過去最高レベルに真剣に考え込み、掴んだ糸口を組成する元素すらを見抜くつもりで隅々まで考え抜く。    ……まあ、そんなことをしても僕なんかに出せる可能性なんて些細なことで。 「もしかして、視界に入っていないと駄目とか?」    ここまでの発動例は二回とも相手に手のひらが見えている状況だった。  確実にそうだったと断言できる訳ではないが、試してみる価値はある。    ――とにかく、一旦この化物の正面に回って、うずくまるような体勢で固まっているこいつの頭部の周辺に立って。   「えっと、取り敢えずお手みたいに……」    そしてこの化物の視界に入る位置へと手を滑り込ませ、何か変わるかを確認する。   「……光った」    そうすると、また手のひらの上に紋様のようなものが出現した。   「準備OKってことか?」    もしそうなら、光っている限り命令できる――的な可能性もあるし、それの検証もさっさとしないと。  少なくともさっきは命令した後も光っていたしな。   「じゃあ取り敢えず、『お手』」    そう命令すると、今度こそ化物は動き出して、その巨大な手を僕の手のひらの上に差し出した。
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