第二話 奴らの目的

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 まるで飼い犬かのようにおとなしく、先程までに感じていた恐怖など欠片も存在しなかった。   「ハハ、冗談のつもりだったが成功するとは」    何も言わず命令に従う化物を前に、多少調子に乗る僕。  ……しかし、こうしてこいつの手で僕の手のひらが隠れているというのに、効果が継続しているとは驚きだ。  何となくでやってしまったが、思わぬ情報が得られたな。   「そういや、効果範囲とかはあるのだろうか」    能力の発動は敵の視界が届く範囲だが、継続するには一定距離にいないといけない――なんてのがあると面倒だ。  それに、もし僕がコイツらから離れた時に切れてしまったら、収集がつかなくなってしまうしな。   「それは最後にするとして……『僕に危害を加えるな』」    化物が了解したと言わんばかりの顔で敬礼をする。  毎回こんな風なリアクションを取られると発動は分かりやすいが、少し大げさな気はする。  ……まあ、大抵はこの命令を初手で出しておけば大丈夫な筈だし、それを心掛けるようにはしておこうか。    ――ある意味ピッタリのタイミングで光が消失した。   「おっと時間切れか?」    使う度に猶予時間がリセットされるとかだったら使いやすかったが、生憎そうではないらしい。  大体発動開始から一分というところか。   「発動が切れても襲ってくる様子はないし、光っていないと有効じゃないという訳じゃないらしい」    実際、さっきまで止まりっぱなしだったからな。  ……となると、許可を出さないと永久に止まっているかどうかも気になる。  だけど、これ以上時間を割く訳にはいかない。   「しかし、これは不便だな」    不便とはいってもバランス調整としては妥当だと思うが、さっきから化物に手のひらを見せても光る様子がない。  やはりインターバルが必要ということなのだろう。   「つまりそう何度も試せる猶予はないし、次使えるようになったら……」    そうブツブツと呟きながら敬礼を取ったままの化物の前から去って、奴の目の前に歩いていく。  そして、奴によく見えるように手のひらを突き出して。   「いろいろ教えてもらうぞ。……えっと、ネトリさんだっけ?」    まずはこいつから今回の侵略目的、及び僕のこの力の正体なんかを聞かないと話にならない。  僕ら地球人が理不尽を被ることになってしまった、それ相応の理由を。
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