第二話 奴らの目的

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 ……しかし、まだ一分ではない筈だが、やはり精神状態に影響しているということなのか?  だとしたら心を落ち着けなければいけないが、奴の気味悪い視線が緊張を煽る。   「心当たりはありませんかぁ? 一度死んで蘇ったとか、予知夢を神の啓示とか言った人をぉ?」    ……無い訳じゃないが、というか約二千年前ならモロだが、でも確かに日本でも有名な卑弥呼とかは紀元後に産まれた。  信じられる筈もないが、こいつらの話が全くのデマだと断ずることができない。  現にこいつらには地球人に対する強制力があり、そして僕自身が予知夢を見てしまっている。  偶然だと言うには、あまりにも鮮明な夢を。   「あれぇ? どうされましたぁ? 腰が引けてますよぉ?」    ――ッ!  いつの間にこんなに距離が空いてしまっていた?  この数十秒の間に、僕は一体何度恐怖に負けて、それで何歩下がってしまっていた?   「情けないですねぇ。保険がないだけでこの有様ですかぁ?」 「う、うるさいッ」    そうやって強がるけども、図星だった。  だって僕は弱い。戦う力なんてまるでない。  ちょっとした能力を手に入れて調子に乗っていただけに過ぎない。それが使えない現状で、未知との対面は僕には耐えきれない。  ……だけど、ここで折れてしまったらどうなる? 少しでも情報を聞き出さずしてどうする?  弱いけれど、不甲斐ないけれど。  だけどそれでも、僕にできることはあるって思いたいから。    ――また手のひらが光りだした。   「おやおや。またすぐ消えてしまう希望の光で何をするつもりですぅ?」    気持ちの悪い喋り方に拍車が掛かった、奴の煽りが耳に纏わりつく。  ……でも、耳を塞がれている訳ではあるまい。   「お前たちの目的は何だ、『答えろ』」 「あなた方裏切り者の血族の抹殺です」    よく言う。来もしなければ気付きもしなかったのに。わざわざ来てかき回すだけの理由がある筈だ。 「その裏に何がある? 『答えろ』ッ!」 「…………」 「答えないということは、王に関連しているんだな?」 「…………」    図星か。  ……これ以上聞けることもなさそうだ。  というか、本当に急がないと間に合わないかもしれない。   「最後に命令だ。僕がターゲットであることを、『忘れろ』」 「……ッ」    
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