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「――うわァァッ!」
目が覚めた。
地面の冷たさと、自身の状況に対する困惑とが重なって、さっきの夢で見た悲劇が僕の中で増長する。
「嘘だ、こんなの起きる訳が……」
信じられないとばかりに懊悩する。こればっかりは本当にあって欲しくないと懇願する。
「とにかく、急がないとッ!」
未だふらつく足で学校の方向へと……
……学校はどっちだ ?
「ここはどこだ? 僕はどんなルートを通ってここまで来た?」
袋小路とは言っても途中で分岐はあったし、大通りに出たとして、闇雲に逃げてきたために現在地が分からない。
学校がどの方向にあるのかさえ、全く分からないのだ。
「迷ってる暇なんか……ッ」
急ぎたい。あの夢の通りに、いやあれ以上に急がなければならない。
絶対にスドウを死なせてはならない。あの夢の通りにしてはならない。
「なにか、何か。現在地を知り、走るより早いものはないか?」
一分どころか一秒も惜しい。手段なんて選んでられないのは現実も一緒だ。
変えられない未来はないはず。じゃないと見る意味がない。
「早く、はやくッ!」
無我夢中で辺りを見回す。一心不乱に糸口を探す。
……そしたら、未だ律儀に敬礼を続けている化物の姿が目に入った。
「そうだ。こいつを使えば……」
無駄にでかいこいつなら、僕を捕まえようとした時のあの速度を出せるこいつなら、間に合うかもしれない。
「どうせ他に手段はない、一か八かだッ!」
僕はあの化物の下へと走り出した。
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