第一話 前哨的絶望

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「そういやさ、俺、今日変な夢見たんだよね」 「僕も見たよ」 「そっちもいつもとは違うのか?」 「ああうん。全然違う夢だった」 『いつも』という言葉から察せられる通り、一応親友とも言える彼と僕が出会えたのは、いつも見るあの夢のおかげだった。  どこか懐かしく温かい、あの優しい夢。  まあそれにも問題があって、例えば居眠りでですら現れるものだから、寝言か何かをネタに、起きた時、馬鹿にされるのだ。  それのせいで中学の時は完全にぼっちだったけれど、同じような夢を見るという彼と高校で出会えたおかげで今では悩みを共有しあう仲だ。 「それで、どんな夢だったの?」 「うーんとな、空にでっかいUFOみたいのが現れてさ……」 「街が地獄と化した夢?」 「ああ。そんな感じ」    聞けば聞くほどに共通項が浮き上がり、嫌な予感は何度も何度も蘇る。 「まあでも、どうせ夢だしなぁ」 「……そう思える勇気が欲しいよ」 「何だ? あんなの起きる訳ないじゃん。大丈夫だって」 「そう……だよな」  それでもこうして同じ境遇の上で否定してくれる存在がいるだけ、僕は恵まれているのかもしれない。  きっと一人だったら押し潰される。独りだったら苛まれ続けていただろう。  だから彼という存在には、感謝しきりなのだ。 「エイリアンなんて存在しないって」 「まあ、分かってるけどさ」 「なになに? 何の話?」  ……いや、完全に同じ境遇という訳ではない。  口下手な僕とは違い、社交的な性格の彼はその寝言すらをネタにして上手く立ち回っている。 「エイリアンとか聞こえたけど、またそいつの妄想話に付き合わされてんの?」 「そんなのいる訳ないじゃん!」  こうして、どんな話をしていても僕がピエロ役にされてしまうし、それについて文句はない。  どうせもう僕は嫌われ者だし、彼が馬鹿にされる必要はない。  ……でも、 「おいおい、ただの夢の話だぜ。俺とエイリが同じ夢を見たから面白いなって話してただけだ」  その当然のように貶される僕を、当たり前のように庇ってくれる彼には、やはり感謝しか浮かばないのだ。 「また同じ夢? どんな夢だったんだ?」 「それがな、妙に生々しくてさぁ……」  そう語りだしながら、彼は僕から離れてどこかへ行ってしまった。
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