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……でもそれはきっと、僕にいちいち飛び火しないようにという彼なりの配慮だと思う。
もちろん勝手な妄想に当たるのだが、そうであって欲しいと切に願っている。
――そうして一人きりになったあと、
「しかし、彼も同じ夢を見たとはな」
と呟いて、今朝見た夢を回想する。
あの化物共はエイリアンなのか。そしてあの巨大な浮遊物はUFOなのか。なぜこの街が狙われていたのか。
どれだけ考えても答えは出ず、彼の言う通りただの夢だと信じたい気持ちを連ねながら、僕は頭を抱えていた。
――鳴り止まぬ悲鳴。イカれてしまった叫び声。
助けを呼ぶ声は虚しい空へと消えるのみの地獄絵図。
虫けらのように踏み潰され、家畜のように首輪に繋がれ、誰もが等しく人間以下と成り下がっている。
そんな中で僕は、ガクガクと震える脚を必死に叩いて、這いずるようにどこかへと向かっているけれど、背後から追ってくる何かは蔑んだ目で追いかけてくる。
「誰か、誰か助けて……ッ!」
「無理ですよぉ。地球人は全員ワタクシたちの奴隷ですからねぇ」
粘着質な声を発しながら、くねくねと奇妙な動きで迫るその何かから、言いようのない恐怖を浮かべながら必死で逃げる僕。
「嫌だ、死にたくない。死にたくない……ッ」
立って走ればすぐさま捕まりそうで、こうして無様であるからこそ舐めプされているのは容易に想像がつく。
だからといって幸運という訳でもなく、この醜態の果てに待っていたのは。
「行き……止まり」
「アハッ、追い詰められちゃいましたねぇ」
理不尽を具現化したかのように立ち塞がる巨大な塀。ペラッペラで頼りない筈の木製の塀。
しかしそれさえも、今の僕にはどうすることもできない絶望だった。
「さぁてぇ、そろそろ捕まえちゃいましょうかねぇ」
曲がりくねりながら、奴の手は迫りくる。
「止めろ、止めろ。来るな、来るなぁッ!」
そんな必死の抵抗は、虚しい空へと消えていった。
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