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第二話 奴らの目的
――まるで石化したように動かなくなった奴をまじまじと見つめながら、頭に浮かぶ疑問符を整理する。
「なぜ動かなくなった?」
辺りを見渡してみても人の気配はなく、見えるのは袋小路と周辺をうろつく巨大な化物共のみ。
となれば、誰かが僕を助けたという訳ではなさそうだ。
「じゃあ、僕がこれを?」
そういえば、奴が動かなくなる前に『ターゲット』という存在について言及していた。
それが僕であるとも言っていた気がする。
まあ、だからといってこんな現象を起こせるとは考えられないが。
「しかし、ターゲットとは何だ?」
この宇宙人たちが一体何を狙っているというのか。それが果たして侵略の目的なのだろうか。
考えろ。
答えはなくとも、ヒントは必ずあるはずだ。
「……そうだ。こいつは『不思議な人間』を探していた」
不死であったり、予知夢を見たり。
言うなれば超能力者に近しい存在を、奴は探していた。
それがどんな意味を持つかは分からない。だけど無意味ではない。
だから取り敢えず、考えるために塀にもたれかかって……
――バキッと、大きめな音を立ててあの憎らしい木製の塀は壊れた。
「うわっ!」
情けない声を出しながら、後方にあった空地へと勢いよく倒れ込んでしまった僕。
瞬く間に空へと移動した僕の視線の先には、あの巨大な化物が見えた。
「――ッ!」
目が合ってたった一、二秒。起き上がるどころか避ける暇すらないまま、その化物は興味深そうに僕の顔を覗き込んだ。
そして笑みのような何かを見せて、銅鐸と見紛うほどに巨大な腕を近付ける。
「止めろッ! 触るなッ!」
意識的か無意識か。僕のひ弱な拒絶反応は、再び交差した腕越しに繰り出された。
――また何も起きない。
覚悟を決めて腕をどけてみると、奴と同じように、腕を伸ばした体勢で化物は止まっていた。
今度はすぐさま辺りを見回したが、変わらず人の気配はない。
……そういえば、この辺りに逃げてきて初めてこの現象は起きている。
もしかして、ここの周辺に何か秘密でもあるのだろうか。
そう思って、視線を落とす。
「って、これは何だ?」
そうしてみて初めて気付いたが、僕の足元がやたらと明るかった。
正確には、右の手のひらから何か光が発せられているようだったのだ。
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