《23》

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   獣や虫の声が聞こえない冬の夜は息が詰まるほどの静寂に包まれていた。 色んなものに自分は縛られている。正信はそう感じていた。 心に絡みついたこの縄すべてを断ち切ってくれるような剛力の持ち主をまずは捜そう。自らの見聞を拡げるのはそれからだ。 月がまた隠れた 。  京には、松永久秀という男がいたな、と正信はなんとなく考えた。 身を切るような風が強く吹き始めていた。 正信は刈谷の町へと急いだ。不自由な右足での歩は、大して早くならなかった。
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