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秀吉に股がる寧々の白い肢体が暗闇の中で浮かび上がり、弓なりにのけ反った。下から乳房を揉みながら、秀吉はその様子を眺めた。明日は久しぶりの非番だ。今夜は思いっきり寧々を抱いてやろう、と意気揚々の態で帰宅した。が、いざ事を始めると何の事はなかった。
触り尽くした肌。触れても特筆するような高揚はなかった。
「おまいさん、おまいさん」
寧々が青色吐息を含んだ声を漏らす。
乳房を揉む秀吉の右手小指の横に紐を通した木片がくくりつけてある。まるで指が6本あるかのように見える。これを付けて触れてやると寧々はよく反応するのだ。
何度目かの交合の後、外から雀の鳴く声が聞こえた。どこかで鶏の声も聞こえている。板壁の隙間から薄い光が射し込んできた。
「何回だ」
秀吉は隣でうつ伏せになって息をつく寧々に訊いた。
「6回」
気だるそうに寧々が言った。
「おまいさんもあたしも、都合、6回果てたよ」
なんという事だ。もう飽きている女との交合でいつの間にか時の経過も忘れ、6回も。我ながら助平が過ぎる、と秀吉は呆れた。
「それより、おまいさん、いいのかい」
言って、寧々は秀吉に体を向けた姿勢で寝直した。
「今日は斎藤利三(トシミツ)殿が来るんじゃなかったのかい? ほら、明智なんとかって方と一緒に。この家には、酒も肴もなんにもないよ」
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