《27》

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     直隆の右隣に並んだ直澄が鞘に収まったその太刀を正眼に構えた。 直澄もまた大きい。直隆、直澄、隆元の3人が並んでいる様を見て真柄山脈などと言ってくる者もいたりする。 「どうだ、長いだろう」 直澄が得意そうに言った。 「ついに、見つけた。太郎太刀より長い太刀だ。越前中の刀匠を訪ねてやっと見つけたんだ」  確かに長い。6尺(約190センチ)はありそうだ。 「振ったのか、直澄」 「まだだ。まずは兄上をびっくりさせてやろうと大急ぎで戻ってきた」  直澄の分厚い唇の間から大きく白い歯が覗く。  失禁し、腰を抜かしている朝倉の使者を、3つの巨影が包みこんでいる。 使者はもう、震えるばかりで眼もどこを見ているか、わからない。 ちと、やり過ぎたか。使者を見下ろし、直隆は少しだけ反省した。だが、時々わからせてやらなければならないのだ。 朝倉家と真柄家は古くから友誼(ユウギ)を結んでいるが主従ではない。それを忘れ、朝倉義景は直隆に対し、時々尊大に振る舞ってくる。過去には、義景の命令を持ってきた使者の腕をへし折って帰らせた事もあった。 そうやって、直隆は朝倉義景との対等性を主張し、今日までやってきた。 「あれ、おかしいな」 直澄が鞘を払った大太刀を振りながら首を傾げる。何度振っても、太刀は波を打ち、実戦で役に立つような斬撃にはならなかった。 幾度目かの試し振り、直澄が誤って、朝倉の使者の真横に剣先を突き立てた。たちまちに便臭が漂う。どうやら朝倉の使者は糞まで漏らしたようだ。
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