《27》

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「真柄直隆」 呻くように言い、義景が直隆を見上げてきた。 義景の頭は直隆の腰の辺りにあった。 直隆は腰を曲げて、義景に眼線を合わせた。 両脇に立つ直澄と隆元も同じ格好になり、義景を見つめる。 義景は露骨に嫌そうな表情を浮かべ、後じ去った。 姿勢を変えず、直隆は前に出た。直澄と隆元も前に出る。悪い奴らめ。直隆は内心で呟き、直澄と隆元を順番に見た。二人とも、満面笑顔だ。どうやら、この弟と息子は面白がっているようだ。 「一昨日は申し訳なかったですのう」 直隆は眉間を寄せて言った。 「だが、わしの気持ちはよう伝わったみたいで、その日のうちに吉統殿を寄越して下された。礼を言わせて下され、義景殿。ありがとうございました」 「こちらも落ち度があった」 3つ並んだ馬面を順番に見ながら、義景は言った。 「真柄家への礼を失していた。すまなかった」 「では」と言って、直隆は直立した。 直澄と隆元も直立する。月明かりが作る3つの巨影が義景を包みこむ。 「仲直り、という事でよろしゅうござるか」  直隆の腰辺りにある義景の頭が何度も縦に動いた。  宴は館の中ではなく、庭で行われるようだ。 舶来品らしき、碧い敷物が玉砂利の上に敷かれ、その上にいくつかの膳が並んでいる。
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