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 薄暗がりは昔からの親しい友人だけれど、完全な暗闇は少し恐ろしい存在。  そうだとするのならば、真夜中の森というのは何処に位置出来るのだろうと考えてみると、一番近しいのは神様という存在なのかもしれなかった。 「やっぱり寒いな」  車体を挟んだ反対側からの声に、同意の声を返す。 「そうだね、この時期だから余計に、かもしれないけど」  下見を兼ねて来た時を含めて、この森に二人で来るのは三回目だった。過去二回は昼間に訪れていた分、温かさが幾分かあったが、この暗がりで見ると、森はさらに静謐さを増しているように感じる。お互いの身じろぎの音が耳障りに思えるほど、静かだ。  二人で心中するには、お誂え向き、最高の舞台である。 「準備、始めてもいいか?」  樹々には葉が生い茂っていて、月光は細々としか地面に届いていない。 「うん。トランクの中に全部入っているんだっけ?」  腐葉土のせいで、一歩踏みしめるたびに不安定に撓む地面は、慣れない歩き心地だった。  ふわふわふわと。地に足をつけているという実感が全く湧かない。なんとも形容しづらい、この世のものではないような感触は、これから逝こうとしている場所を感じさせてならなかった。
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