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ジャレクとサチが並んで歩き、ラルフは二人の少し後ろを歩く。ラルフは考え事をしており、前を歩く二人の会話はぼんやりと聞いていた。
ラルフ(まったく、今日は俺の誕生日だって言うのに、二人とも忘れているのか?にしても、こんな日と重なるなんて)
ラルフは無意識に足を止めていたことに気づいて、ハッと顔を上げる。すると前方にジャレクとサチの姿は既になく、置いてかれた心境を「はぁ」と小さくため息を吐くことで表現する。
ガザゴソ、とラルフ近くの草木が不意に少し揺れ、反応するように身をすくめる。
ラルフ「な、何か居るのか?」
警戒するように上半身を少し仰け反らせ、恐る恐る音のした方へと近づいていく。
ガサ!とまた大きな音。ビクッとして一瞬、飛び退きそうになるも堪えて、一歩一歩確実に、足音を消すようにしながら慎重に進む。そのとき、風が強く吹きつけたように再び草木が揺れ、何かが素早く通り過ぎる影を目に入れた。
ラルフ「うわっ!」
思わず尻餅をつく。
ラルフ「なんだったんだ、いったい……」
立ち上がろうと地面に着けた右手を離すと不意に右腕が目に入る。そこにある腕時計は時間が指し迫っていることを示していた。
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