脚本一話目

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ラルフは沸き立つ好奇心を好意的に受け止め、表情は少々緩んでいた。そしてこの窮屈な場所から抜け出すことへ嬉々するように足取りは軽かった。 5 小路地は建屋と建屋の間にひっそりと存在し、昼前であっても薄暗い。横幅は四十センチほどしかなく、ラルフはすんなりその小路地に入り行く。先は十メートルほど進むと行き止まりで、その先は左手側へ直角に曲がり通路が続いている。進むごとにより薄暗さを増していくように感じるのは、ラルフの心情を表していた。それでも躊躇うことなくラルフは真っ直ぐ進み続け、行き止まりにまで着くと、直角の曲がりとなっている左側を向く。と、その時に何かが動いたのを見て取った。 ラルフ「だ、誰!?」 返事はない。影はすぐに消えた。そして“バタン”と戸を閉めるような音を僅かに響かせた。その音の元を探ろうと、ラルフは曲がり角の先へと歩み始める。 変わらず幅が四十センチほどしかない通路が続き、この通路には日が当たらず前方には真っ黒の外壁のみが曖昧に見える。それでもラルフはゆっくりと歩みを進める。その途中、ぼんやりとした明るさの中、左手側の壁に取っ手があるのに気がついた。
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