脚本一話目

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脚本一話目

1 七畳ほどの部屋。家具は中型のテレビにぎっしりと漫画が詰まる本棚。勉強机の上だけは綺麗に片付いており、窓辺にベッドが設置されている。この部屋の主人はラルフという名の少年猫。ラルフは茶トラ柄の子供猫であり、春先からようやくフワフワとした冬毛が薄まり、心地よい日和と共に睡眠時間は自然と伸びていく。 五月の早朝。外は既に明るく、窓辺のベッドにパジャマ姿のラルフが寝ており布団をかぶっている。 蒲団の中からスッとフサフサの腕が出てきて、枕の横にある目覚まし時計を手に掴む。 “ピピピ…” 電子音のアラームが鳴り始めるとほぼ同時に止める。 ラルフ(もう朝か……でも、今日は!) 時計を元の位置に戻すと布団から顔を出し、そのまま上半身を起こす。 首を少し傾け、壁にあるカレンダーに目を向ける。五月四日の箇所がクローズアップ。そこには赤丸が記されている。 ラルフ(今日で十五歳か) 窓の外へ目を向ける。 ラルフ(いい天気だ!) 両手をピンと張って思い切り伸びをした後、二本足でベッドから立ち上がる。それから部屋を出る。トン、トンと階段を下る足音。
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