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春―遠雷―
これが、最後のラブレター
君は、覚えてるかな。
あれは、今日のように吹く風も柔く、朝からとても心地よい、花の香の漂う春の日の事だったね。
桜の花は咲いていなかったけれど、陽光煌めく景色はとても鮮やかで、笑ってしまうほど美しかった。
だからその分、突き付けられた衝撃はひときわ大きく、目の前が真っ暗になるなんて、そんなことを実際に体験することになるなんて、思ってもみなかった。
私は決して忘れない。
忘れることなんて出来ない。
あれほど強く、嘘であってほしいと願ったことなど、無かったのだもの。
四月一日。
この日を決して、忘れない。
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