春―遠雷―

1/13
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ

春―遠雷―

 これが、最後のラブレター  君は、覚えてるかな。  あれは、今日のように吹く風も柔く、朝からとても心地よい、花の香の漂う春の日の事だったね。  桜の花は咲いていなかったけれど、陽光煌めく景色はとても鮮やかで、笑ってしまうほど美しかった。  だからその分、突き付けられた衝撃はひときわ大きく、目の前が真っ暗になるなんて、そんなことを実際に体験することになるなんて、思ってもみなかった。  私は決して忘れない。  忘れることなんて出来ない。  あれほど強く、嘘であってほしいと願ったことなど、無かったのだもの。  四月一日。  この日を決して、忘れない。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!