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モンテカルロ法とは、乱数を用いた試行を幾度も行うことでより良い解へと近づいていく計算機シミュレーションの方法である。
モンテカルロ法(律)とは、ランダムに学校や職業や配偶者を決定することでイレギュラーな進化を促進し、より良い人類を生み出そうという法律である!
「だめだ」
およそ600ページがバラバラっといっぺんにめくられて本が閉じられる。
「こんな問題解けないよー」
少女が「自然科学者のための数学概論」と背表紙に書かれた分厚い本の上に手を乗せる。
「そんなことないわよ、もうちょっとで100ページよ。千鳥はできる子、頑張って」
こぶし大の黄色いマスコットがはげましながら少女の腕をゆする。
「あたしにできるのはせいぜい小学生のための算数ドリルよ」
「まあでも、千鳥ちゃんはよくやってるわよ」
隣の少女がなぐさめる言葉をかける。
「いいなあ、ひーちゃんの教科書は当たりだよね」
こちらの少女の机の上にはチャート式と書かれた本とノートがあり、今は問題を解いているところらしかった。
「ノートじゃなくてホログラムタブレットだったらもっと良かったけどね」
青いマスコットが鉛筆を握っているひーちゃんの手をつつく。ひーちゃんは視線をノートに戻し式の続きを書き始めた。
千鳥はひーちゃんと閉じられた本と自分の手をゆするマスコットをぼんやりと眺める。
反対側を向いて、窓の外を眺める。
街並みと、夏の陽気、晴れた空、青空の真ん中には巨大な天窓があり、黒々とした宇宙が見える。
目を閉じて深呼吸をする。マスコットが手をゆするのをやめた。
何の視覚情報もない黒い景色のなかで、自分の呼吸の音が3度繰り返される。
「よし、やるか。ランちゃん、何ページだった?」
「93ページよ」
そう答えて黄色いマスコットは透けていきフェードアウトした。
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