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「お、いらっしゃい」
「こんばんは。」
趣味としてお店を開いている人は結構いる。八百屋さんもそういう人だ。
「これが欲しい野菜のメモ」
「はいよ」
八百屋さんがメモを見ながら野菜をそろえてくれる。
「ねえ、おじさんはなんで八百屋さんやってるの?」
「え?最初はモンテカルロ法(律)でやることになったんだけど、深い理由もなく続けてるのかな……逆にどうしてそんなこと聞こうと思ったの?」
大人になればなるほどモンテカルロ法(律)の執行要素は少なくなる。大人は進化の可能性が少ないからだ。職業は、ひとまずランダムに割り振られるが、一定期間の後は辞めてもいい。おじさんは何年も続けているのだろう。
「いやあ、あたしの数学の教科書って難しいのが選ばれちゃったのね。それで、もしあたしが教科書自由に選べたなら、なるべく簡単なのにしたと思うの」
「うん」
「数学なんて、マスコットに聞けば本当はすぐに解けちゃうわけだし、仕事だって、今は働かなくったって生きていけるわけじゃない?あたしのお父さんやお母さんは仕事はしてなくて映画観たり本読んだりして暮らしてるし。おじさんはなんで働きつづけてるの?」
「うーん、少なくとも俺は本読んだりするよりもこうやってお店やってお客さんと話しするのが好きだからな。それに、なんの野菜をどれだけ仕入れようかとか、値段考えたり帳簿付けたりするのも楽しいと思ってるよ」
「へえー」
「昔はそういうのを真剣にやらないと生き死にがかかってたんだろうけどね、まあ気楽に帳簿付けてみたりしながら、俺って商才あるなあ、これなら旧時代にタイムスリップしても生きていけるな、とか考えたりね。そうそうちょっとやってみたい事があってね、手伝ってよ」
そう言うとおじさんは開いた手くらいの大きさの紙を渡してきた。
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