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「あっ、紙のお金だ!歴史の教科書で見た」
「そうそう。プリントしたやつだけどね」
紙にはヒゲを生やしたおじさんの絵が書かれている。
「よーし、じゃあご要望の野菜一揃えで840万円ね」
おじさんが野菜の入ったカゴを置く。
「え?え?」
「そしたらそれを、はいじゃあ1000万円、と言って俺に渡す」
「え?1000万円?」
おじさんが笑いながら早くやれと手まねきで指示している。
「は、はいじゃあ1000万円……」
「あいよ、それじゃあお釣りの160万円だ!」
紙幣を受け取ったおじさんが代わりにじゃらじゃらっ、と私の手に何かを乗せた。
「おおー、コインだ……」
「そうそう、それもプリンタで作ったんだけどね。昔は実際にそのお金でやりとりしてたんだから、当然勝手に作ったらダメだったらしいけど」
銀のやつ、穴の空いたやつ、茶色いやつがある。
「好きなやつを一枚あげるよ」
「え、ホント?ふーん、どれがいいかなあ」
まあ、どれでもいいといえばどれでもいいのだけれど。それぞれに異なる数字と意匠が彫られている。
「じゃあこれにする」
10円だろう。1、0、それぞれがひとつずつ書かれている。反対側には建物が彫られた、茶色のコインだ。
「お、それでいいの?それが一番安いよ?こっちの銀色の方が高価なのに」
「うんまあ、これがいいかな。ありがとう」
もらったコインをポケットに入れて、野菜の入ったカゴを持つ。
「あ、待って、お嬢ちゃん可愛いからしょうがない、これもオマケしちゃおう」
そう言っておじさんがショウガをカゴに入れてくれた。
「え?えへへ、ありがとう」
「これもね、旧時代にはよくあったやりとりらしいよ」
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