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自転車から降りてゆっくり帰る。やっと少しすずしくなってきた。
「うーん、人に歴史ありというか、ねえ、なんというか、意外な話だったよね、ランちゃん」
「そうね。それにカキンゼーの人の感情は貴重なのよ」
感情を学習している人工知能的観点だ。
「でも、なんでカキンゼーの人を義務として働かせたりするの?だって、実際には働く必要ないわけでしょ?」
「ひとつは、自分で選択する者には義務を課すことでモンテカルロ法(律)が機能するようにね。もうひとつは、障害や困難がある方が愛が燃え上がるからね」
「愛が燃え上がる……」
そういうものか。
「でも、あたしのお父さんとお母さんも仲良いよ」
「そうね。それは、幸せというか、偶然がそういう結果を生んだというのは、それはそれで運命的よね。ランダムに選んだ人と暮らさなければならないということは、乗り越えるべき試練になったり、ラッキーなハッピネスになったりするけど、どちらにせよ感情を揺さぶられるわね」
人と暮らすことは試練にもなり得るのか。今のは、私の両親が仲がいいのは何故かという質問への回答というよりも、雑談に近いだろう。
「でも、働いて、お金を得るとか、そういうことって今じゃあんまり意味がないっていうか、それでも楽しいものなのかな」
「そうねえ、旧時代にも、使い切れないほどのお金を持っていても、精力的に働き続ける人はたくさんいたのよ」
「へえ」
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