剣の星のクーパ・ルー

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『マダ動ク。本当ニ良イ性能ダナ、有機ろぼっとメ。……褒美ダヨ、見届ケタマエ』  《ヨドミ》は水晶樹の幹へ刃を突き立てた。《既死の剣》の中で増幅された闇が、切先から水晶樹へと注ぎ込まれていく。魔法少女の眠る水晶樹へ。 『見届ケヨろぼっと。星ノ死ヲ』  水晶樹の内へ潜り込んだ《ヨドミ》は細い枝を無数に広げ成長を始めていた。爆発的な速度で。それは水晶を浸食し、その中に眠る魔法少女を呑み込まんと、醜悪な魔手を伸ばしていった。 「ぼくは……ぼくは……!」  手を伸ばす。届かない。そこに彼女がいるのに、護らなければならないのに。 「……ぼくは、ぼくの剣が欲しい」  声が掠れる。涙がにじむ。  星が輝く天空へ、小さな小さな少年の手は差し伸ばされる。欲し、望み、祈り、願う。 「この子を守れる力が欲しいッ!」  腹の奥底から膨れ上がった想いが、声となって喉からあふれる。大気を震わせ、空へ広がり、宇宙の彼方へ。  そして。  ひとつの星が、少年の叫びに応えた。星は剣となり空を翔ける。真っ直ぐと、真っ直ぐと、クーパ・ルーの下へ。その輪郭は、近付くにつれてどんどん大きくなっていく。夜空の星々を覆い隠し、天を埋め尽くし、視界いっぱいに。 『ナンダ……アレハ……?!』  雷鳴にも似た轟音と衝撃が、世界を真っ白に染め上げた。  クーパ・ルーの《剣》は人型の《ヨドミ》を圧し潰し、水晶樹へ突き刺さり、浸食する闇の根を断った。 「これが……ぼくの、《剣》……!」  星の光を浴びて、大樹の如く聳え立つ。  それは巨大な巨大な剣だった。  その刀身は、クーパ・ルーの背丈を優に五倍は超えている。  成人の儀式、祝いの日。今宵、最後に生まれた剣。それは、人が手にするにはあまりにも大き過ぎた。
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