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「戦いがあった。運命もあった。気付けばこの肩に、責任を背負っていた!」
苦しげに、ロボ・リロンは低く叫ぶ。
「この世界を守るために、戦った。多くの死を越えて、ぼろぼろの平和を勝ち取って。小さな笑顔たちを、取り戻した。……彼女を求めるということは、それら全てを捨てるということだ。辛くても苦しくても、それでも日々を重ねるこの星の全てを……できないさ。できなかったのさ、オレには」
ゆっくりと、クーパ・ルーを地面に下ろして。ロボ・リロンはまたいつもの姿勢に戻った。ただひたすらに、風車を回す姿に。
「諦めて、諦めて今のオレはここにいる。《ヨドミ》を払う風を届けるために、ただ生きている。この手は確かに、かつて望んだように大きくなった。けれどこの《剣》にも、あの子にも、……今はもう届かない」
「ねぇ、ロボ」
ロボ・リロンはもう応えない。機械に徹しようとして、しかし少年の次の言葉に、らしくなく取り乱した。
「恋って、なに?」
「は?」
「先生が言っていた。ロボは魔法少女に恋をしたって。ぼくも、そうなんだって」
「おまえの師匠は、剣士に何を教えてるんだ……?」
頭を抱える。中に詰め込んだ演算装置を忙しく働かせるが、満足する回答など見つかるはずもなかった。
「もう遅い。その情熱が今は無い。俺のこの胸は……」
自嘲の声を漏らし、ロボ・リロンは胸の装甲を開いて見せた。
「からっぽなんだ」
大きなロボ・リロンの胸の奥には、何も無かった。ただ虚ろな空洞だけが、そこにあった。
「それでも《剣》を得たいなら、こんな身体になりたいのなら、やり方は本に書いてある。本はそこの小屋の中だ、勝手にやれ。オレは知らん」
「うん、そのつもりだった。手に入れたかったんだ、大きな大きな腕を。でも……止めた」
ロボ・リロンは少しだけ黙り込み、そしてぽつりと声を返す。
「それがいいさ」
けれど、続くクーパ・ルーの言葉は彼の予想しないものだった。
「君を連れていく」
「ああん?」
ロボ・リロンは思わずクーパ・ルーへ振り向いてしまった。
その瞬間、運命は決まってしまった。
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