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「君と一緒に、ぼくはぼくの《剣》を掴む」
少年の瞳は幼く、しかし揺ぎ無い。真っ直ぐに、どこまでも真っ直ぐにロボ・リロンの心を射抜く。
風が、吹いた。そう感じた。
それでもロボ・リロンは首を振るしかない。あの子の面影を、クーパ・ルーの瞳の奥に視てしまったとしても。
「オレはここで風車を回す。この世界の装置として。それが、彼女の……魔法少女の心を理解するための、たったひとつの方法なんだ」
ハンドルを握る、右手が震えた。
「だからオレは幸せさ。そうさ! 恋したあの子と、同じ生き方を俺は選んだ! 何も間違っていない!」
「違う」
「何が違う!」
「きっとあの子は泣いている。だから、助けに行こう。君とぼくなら、ぼくたちの《剣》なら、それができる」
「泣いている? 何を根拠に! おまえが彼女の、何を知っている!」
「知らない、知らないさ。けど、そう感じた。ロボ、君を見たからだ。君があの子と同じなら、あの子はきっと寂しくて泣いている」
「なんでだよ!」
ロボ・リロンの声は、少年だった頃のそれに戻りかけていた。
「だってロボ、君は泣いているじゃないか!」
割れた鉄仮面の下に、流れ続ける涙。ロボ・リロンの腕から、力が抜け落ちる。
自分に嘘を吐いて、諦めたフリをして。それでも忘れられぬ恋の痛みに、流れる涙は消えなくて。だから被った鉄の仮面も、しかしクーパ・ルーの前では意味が無かった。
彼もまた、同じ痛みを抱いてここへ来たのだろうから。
「オレが風車を止めてしまえば、《ヨドミ》の発生を抑えきれなくなる」
力無く、ロボ・リロンは肩を震わせる。
「全部倒そう」
「は?」
思わず出た声は、自分でも笑ってしまうほど間が抜けていた。
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