剣の星のクーパ・ルー

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九  風の途絶えた水晶の森。  死臭の底に沈んだ楽園。  安らぎを奪われた墓所。  哀しくも美しかった水晶樹の森は闇の色に穢されて、葉の一片、蔦の一筋に至るまで、目に映る全てが黒く黒く《ヨドミ》に汚染されていた。  けれど絶望に支配された森の奥、未だ消えず灯り続ける光があった。  クーパ・ルーの《剣》だ。  ひび割れた、最古の水晶樹。幹も枝も《ヨドミ》に冒されながら、だがその頂きとそこに眠る魔法少女は、清く蒼い光の中に護られている。   水晶樹に突き立った《剣》を中心に、球状の空間が魔法少女を包み《ヨドミ》の汚染を退けていた。クーパ・ルーがそう望んだように。  そして《剣》は、少年の帰還を待ち続けていた。
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