剣の星のクーパ・ルー

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 森の闇の中、少年たちは光を目指して走る。  星の全土より集った剣士たちの戦列は、《ヨドミ》の森に対し一直線の突撃陣形をとった。彼らは地上に描かれた一振りの剣となって闇の森を斬り拓いていく。個性豊かな《剣》をそれぞれに掲げ、ひとつの唄に声を重ねて。この星の開闢の時代を語った、神話のように。  そして、その剣の切先にロボ・リロンとクーパ・ルーはいた。   幾重にも行く手を阻むのは《ヨドミ》の変化した多種多様な水晶魔獣の群れ。爪と牙と羽を血に染めて、ヒトと《剣》を殺めて踊る。鉄を掻き毟るような、けたたましい嘲笑を響かせて。   獣じみた咆哮と、鉱物が擦れる足音。幾重にも重なる剣撃音と断末魔。牙が骨を砕き、鉄が闇を断つ。  「見えた、ぼくの《剣》だッ!」  闇の奥の光を誰よりも先に見出したのは、クーパ・ルーだった。木刀一本を頼りに先陣を駆け抜ける彼の声は凛々しくそして鋭く、戦場の騒音の中でも聞き逃すことはなかった。 「オレに乗れ、クーパ・ルー!」  折れた《剣》を振るい隣を走っていたロボ・リロンは、クーパ・ルーへと鉄の巨腕を差し伸べた。   その腕をクーパ・ルーは駆け登り、そしてロボ・リロンの胸の中へと飛び込んだ。  ロボ・リロンの胸の中には、特別に設えた座席が用意されていた。座席の左右には紋様の刻まれた輝く水晶球が配置されており、それはクーパ・ルーとロボ・リロンを接続し、互いの《剣》を使用可能にするための装置だった。 「行こう、ロボッ!」 「おおうッ!」  座席に飛び込んだクーパ・ルーは、水晶球の紋様にその小さな手を重ねた。  一心同体。鉄巨人の豪腕に、少年の天性の剣技が合わさる。 「……ロボ、右!」  クーパ・ルーの常人離れした反射神経が、ロボ・リロンの巨体を反応させる。  右へ視線を振れば、巨狼型の《ヨドミ》が剣士たちの陣を突破し、牙を剥き出して襲い掛かってくるところだった。速い。《剣》を構える暇も無い一瞬の内に、巨狼の間合いへと入られていた。  しかしロボ・リロンは、いやクーパ・ルーは無造作に折れた《剣》を《ヨドミ》の口内へ捻じ込むと、手首を高速回転させ《ヨドミ》の内蔵である闇を抉った。  甲高い悲鳴を上げて《ヨドミ》が霧散する。刀身にこびりついた闇を振り払い、ロボ・リロンは折れた《剣》を右肩の鞘へと納めた。 「同調は完璧だ。これなら……!」
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