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「ロボ、ぼくらの《剣》だ……!」
仲間と《ヨドミ》、双方の屍を踏み越えて。光へと到達したロボ・リロンは、クーパ・ルーの《剣》の柄を握り締めた。
だが。
「抜けんぞクーパ・ルー!?」
ロボ・リロンの声に動揺が走る。
両手で柄を掴み、脚を踏ん張り、全身の膂力を駆使して引き抜こうとするが、《剣》はその空間に固定されたまま、全く動く気配が無かった。
「あっれ~?」
クーパ・ルーも、困ったような声を上げる。
敵陣の最奥、押し寄せる《ヨドミ》の攻勢は熾烈だ。ふたりの周囲では、女剣士を筆頭に最精鋭の剣士たちが防御陣を展開し、決死の覚悟で敵を防いでくれている。切り札であるクーパ・ルーの《剣》を信じて。
しかし、その肝心の《剣》が抜けない。ロボ・リロンの豪腕でも、クーパ・ルーの気合でも、《剣》はビクともせずに水晶樹の幹へ突き立ったままだった。
「クーパ・ルーの《剣》をオレが使う方法……本に書いてあった通りにしたんだがな」
「ロボの五感は、ちゃんとぼくに伝わっているから……接続できてるはずなんだけど」
《剣》と剣士は本来、紋様という感応デバイスを通じて互いのIDを識別し、接続する。IDは固有のものであり、自分以外の剣士の《剣》と接続することはできない。だが理論的には、ふたりの紋様を接続し同調させることで、ロボ・リロンがクーパ・ルーの《剣》を振るうことも可能なはずだった。
「しかしやはり、ぶっつけ本番は厳しかったか」
「でも、やってみなければ始まらないだろ」
「おまえは前向きだなぁ、クーパ・ルー」
「ロボは考え過ぎなんだよ」
突如、頭上に空を切り裂く轟音が響いた。飛行型の《ヨドミ》が空を覆うほどのその巨体から、大量の蟲型を投下し始めたのだ。
豪雨のように、《ヨドミ》が降り注ぐ。そして魔法少女の水晶へと降り立とうとしていた。
瞬間。
「「その子に触れるなッッ!!」」
ロボ・リロンとクーパ・ルーの声が重なる。同時、クーパ・ルーの《剣》が閃光を放った。
球状に展開していた光が、扇が閉じるかのように刀身へと集束していく。より鮮烈な輝きを帯びたクーパ・ルーの《剣》は、ロボ・リロンの手の中でゆっくりとその姿を露にしていった。
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