剣の星のクーパ・ルー

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 ロボ・リロンの声は炎を思わせた。静かに、しかし激しく燃え盛る、蒼い炎。  仮面の下に涙を隠し、戦い続けた鉄巨人の、それは初めての怒り。全てを焼き尽くす灼熱の感情。 「オレの《剣》よ……!」  怒りと哀しみに燃えた、ロボ・リロンの手が《剣》を掴む。ロボ・リロンの《剣》を。 「錆び付き折れて朽ちかけて。それでも、おまえはオレの《剣》だ。ならば目覚めろ! 護るべきものは、この胸の中にこそ……!」  折れた先端に、鋭利な焔がほとばしる。 「焼き尽くせッ!!!」  《剣》から発した炎を全身にまとい、ロボ・リロンは燃える流星となって飛翔した。 『醜イ、醜イゾ。理知モ無ク情動ニ操ラレルろぼっとドモメ。貴様ラトハ、ヤハリ相容レヌッ!!』  ロボ・リロンの炎の《剣》に全身を斬り刻まれながら、《ヨドミ》は呪詛を撒き散らし続ける。その憎しみが、ロボ・リロンの怒りを更に暴走させていく。  ロボ・リロンは《ヨドミ》の、顔の無い顔の前へと躍り出た。そして、炎の《剣》を振りかざす。 「消えろぉおおおおッッ!!」  怒りに支配され狭まったロボ・リロンの視界。そこに、顔の無い顔の奥に囚われた魔法少女の姿は映ってはいなかった。  炎の《剣》が、《ヨドミ》ごと魔法少女を焼き尽くしてしまいかけた、その刹那。 「ロボッ!!!」  胸の内からあふれた鮮烈な風が、ロボ・リロンの怒りを吹き飛ばした。 「クーパ・ルー?!」  信じられない思いで、ロボ・リロンは引き裂かれた胸部装甲を開いた。  そこに、少年は生きていた。 「熱くならないでロボ! あの子まで傷つけてしまうから……!」 「クーパ・ルー……生きてたのかよ!」 「死にかけたよ! でも!」  血塗れの顔で、クーパ・ルーは得意気に笑った。そして、傷だらけになった木刀を掲げて見せた。 「木刀でも、護るくらいはできる。それが彼女から貰ったものならば、尚更ね」
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