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「どんなに遠くても……それを掴み取るために……これが、オレのッ!」
《ヨドミ》の、顔の無い顔のその奥に。囚われた愛しい少女を今度こそ瞳に映して。
「ロボ・パァーーンチィッ!!!」
ロボ・リロンの左手首が炎を吹いた。そしてその炎を推進力に、左拳が撃ち出される。それは真っ直ぐに、真っ直ぐに魔法少女の下へと伸びていった。
『馬鹿ナ、《剣》以外ニ我ラヲ貫ケル物質ナド……?!』
顔の無い顔に、ロボ・リロンの拳は突き刺さった。驚きと戸惑いに《ヨドミ》の動きが鈍る。
「折れてしまった、オレの《剣》の切先……勿体無かったんでな、素材にしたんだよ。この、左手のッ!!」
ロボの左手の甲に、紋様が浮かび上がる。それはロボの胸の中の紋様と感応し、クーパ・ルーの前に光を灯した。
射出された左拳と左前腕は、細く強固な鋼線によって繋がれていた。鋼線を巻き上げて、ロボ・リロンは飛んだ。左拳がアンカーとなって突き刺さった、顔の無い顔を目掛けて。その奥に囚われた魔法少女を目指して。
「うわ、凄い! 飛んでる! 楽しい! なにこれ?!」
「振り落とされるなよ、クーパ・ルー!」
「ぼくに遠慮は要らない! 全力全開で行こう、ロボ!」
『本体デアル《剣》ヲ失ッタ貴様ラナゾッ!』
鋼線を頼りに真っ直ぐ飛ぶしかできないロボ・リロンの前方に、《既死の剣》が槍衾を形成した。
だが、ふたりは《ヨドミ》の声など聞いてはいない。
「聴こえた? ロボ」
「ああ。《剣》の声だ」
ふたりは、不敵な笑みを口元に浮かべる。
「ぼくの」
「オレの」
「「《剣》よ、この手へッ!」」
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