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二振りの《剣》が、空を裂いて飛来した。ロボ・リロンの右手に収まったそれは、柄頭で連結されて、二つの刀身を持つ一つの剣となっていた。
風車の羽にも似たその剣を、ロボ・リロンは右拳ごと回転させた。巻き起こった剣風が《ヨドミ》を斬り拓き、道を刻む。
『聞ケ、ろぼっとドモ。貴様ラハ《ツルギ》ノタメニ感情トイウ餌ヲ排泄スルダケノ道具……グハァッ!?』
顔の無い顔へ到達したふたりは、《剣》で力任せにその横っ面を殴りつけ、黙らせた。
「力を、心を重ねろクーパ・ルー! オレとおまえで!」
「ああ、君とぼくで! 彼女を救うッ!」
《剣》と少年とロボの、紋様が感応し合い眩い閃光を放つ。
ロボの左手が回転を始めた。風車よりも速く、激しく、力強く。それは射出され、そして鋭い螺旋を描いた。
「「つ、ら、ぬ、けぇええええええッッ!!」」
螺旋が、《ヨドミ》の頭に風穴を空けた。
そして。
「やっと掴めた……君を……!」
手の中に握り締めた、少女のぬくもり。ロボ・リロンの声が震える。
だが。
貫いた《ヨドミ》の頭部の内側、血が滴るように染み出した無数の《ヨドミ》が、人型へと変形していく。
ロボ・リロンの左手に、発生した大量の人型が押し寄せ、取り付いた。鋼の指に絡みつき、その隙間から見える魔法少女を奪おうと手を伸ばす。
「拳が引き抜けない……捕まった!?」
「大丈夫ッ!」
焦るロボ・リロンを、クーパ・ルーが叱咤する。
「ぼくが、行くッ!」
クーパ・ルーはロボ・リロンの胸から飛び出し、左前腕から伸びる鋼線の上を疾走した。その先にいる、魔法少女を護るために。
「うぉおおおおおおッ!」
ロボ・リロンの左拳に、そこの抱かれた魔法少女のもとに、クーパ・ルーは駆けつけた。そして背負った木刀を引き抜き、群がる人型の《ヨドミ》たちを打ち払っていく。
「ロボ!」
「応ッ!」
《ヨドミ》の圧が減った。鋼線が巻き上げられる。魔法少女とクーパ・ルーを乗せた左手が、ロボ・リロンのもとへと戻っていく。
「よし! よしよしよしッ!!」
興奮と緊張と警戒が入り混じり、ロボ・リロンは思わず声を上げていた。昂ぶった感情、夢へ近付いていく高揚。
それは、クーパ・ルーも同じだった。木刀を構え《ヨドミ》の追撃に備えながら、しかし誘惑に抗えなかった。
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