剣の星のクーパ・ルー

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一  その少女を見た瞬間、少年の視界は光で満ちた。  涼やかな風が吹きぬけて、少年の髪を揺らしていた。  頬が熱い。胸の鼓動がひとつ高く跳ね上がり、そして駆け足を始めた。心臓が脈を打つたびに、胸に生まれた熱量が全身へと駆け巡る。  少女は眠る。美しく澄んだ水晶の樹に包まれて。  風の中に踊るように、ふわりと広がる長い髪は細く艶やかで。  触れたくて、抱き締めたくて、伸ばした手は、けれど。  届かない手を、それでも伸ばす。彼女を想い、その手を伸ばす。  ただそれだけで、幸せだから。 「はじめまして! ボクの名前は……」  大きな大きな水晶樹。木登りと呼ぶには少しだけ波乱に満ちた冒険の果てに、少年は恋に出逢った。水晶の中に眠る美しい少女。この星の核、《創星の魔法少女》に。  音楽が、聴こえる。星の唄が。
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