剣の星のクーパ・ルー

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「星界より剣が降りる。耳を澄まし、目を凝らせ。その腕に宿した紋様が、流れる星に運命を感じたのなら……それが君の《剣》になる」  《剣》と共鳴し輝く自らの紋様を掲げて見せて、女剣士は再び夜空を仰ぎ見た。子どもたちもそれに倣う。  見上げた空に星が三つ、ひときわに輝いて、そして流れた。子どもたちはそれぞれに、別々の流星をその目で追っていく。三人とも、己の剣を見出したのだ。  流れ星は森へ降りて、やがて剣となって時を待つ。収まるべき鞘、運命の相手と出逢う時を。 「……三つ?」  女剣士は子どもたちを振り返った。  三人の子どもたちは、神妙な顔で、緊張の面持ちで、期待に輝く瞳で、己の剣が下りるであろう場所へと歩み始めていた。  三人、三人だ。  ひとり、足りない。 「クーパ・ルー!」  森を貫くような鋭い声音。子どもたちは立ち止まり、首をすくめる。だが名を呼ばれた子どもの、返事は無い。  子どもたちは目配せし合うと、さきほどの少女が代表となって手を上げた。 「先生! クーパ・ルーは魔法少女様を見に行くって……」 「……ああ、クーパ・ルー。最も子どもらしい子ども。だが好奇心は時に、《ヨドミ》よりも素早く容赦なく、君の命を奪うぞ」 「すみません先生、私は止めようとしたんですけれど……」 「君に罪はないさ。私にすら気配を感じさせないクーパ・ルーの才能こそが罪だ」  女剣士は少女へ柔らかに笑いかけると、その頬に触れ耳元へ囁きかけた。 「君たちは君たちの《剣》を目指せ」 「でも、クーパ・ルーが……」 「《ヨドミ》が蠢き始めている。凪が訪れる前に、早く」  少女の瞳を覗き込み、女剣士は密やかに告げる。少女は表情を引き締めると、師へお辞儀をしてから踵を返し、駆け出した。残り二人の子どもらを追い立て、森の奥へと踏み込んでいく。 「良い子だ」  微笑むと、女剣士は指を弾いた。その音を合図に、どこからともなく三人の人影が現れる。女剣士と揃いの鎧と外套を身に付けた大人が三人、女剣士へ一礼して子どもらの後を追う。少々、過保護ではある。だが《ヨドミ》の気配が濃くなり始めた森に、子どもだけでは不安があった。  子どもらの無事を星へ祈り、女剣士はこの森で一番高い水晶樹を見上げた。    虚空を滑るように跳躍する。女剣士は水晶樹の枝から枝へと飛び移り、その頂きへと急いだ。
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