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全天型のモニター正面、砂煙の向こう側に群れがある。俺が、戦うべき敵の群れが。
――レイジ! ……アークへの撤退命令です!
ノイズ混じりの通信機の音声。ここだけは聞き取れた。だから、何だという。
――間もなくここも未来非在区域となります。レイジ、このままではあなたも危ない!
元より戦況は最悪だ。最初から危険は重々承知。退くべき道理はここには無い。俺は操縦桿を何度も握り直す。その感触を確かめる度に、少しずつ自分の身体の境界線がなくなっていく気がした。コクピット隅のメーターに表示される心拍数、呼吸、脳波、波動、どこをとっても異常値を示しているというのに、どこか自分の奥底のような場所が冷たくなっている。大丈夫だ。俺はまだ戦える。
――レイジ! あなたまで失えば、我々は全ての戦力を失うことになる! その意味が
通信機を叩き壊した。そうだ。カイリも、エディも、クリスも、ヲゥも、長官も。全員消えた。いなくなった。奪われた、奴らに。喰われた、アイツらに。そして……那由。お前だけでも、取り戻す。喰い尽くされていないお前なら、まだ希望はある。それだけは成し遂げる。絶対に。
「来いよ、悪食ッ! 俺の未来、俺の波動力、喰い尽くしてみやがれェッ!」
俺の操縦と波動力に呼応して愛機、『D-レッド』が駆け出した。
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