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気が付くと、真子は見知らぬ空間にいた。四方を真っ赤な壁に囲まれ、ベルトで椅子に固定されていた。壁一面には無数の計器類やモニターが取り付けられ、座席の丁度手前には両手持ちの操縦桿があった。
さながら、フィクションに登場する戦闘機やロボットのコクピットのようだった。
モニターには外の様子が映し出されていた。巨大なゴミが散乱し、家具と思しき物体が高くそびえ立つ。そこは巨大な子ども部屋だった。真子はまるで、自分が小さくなったかのように思えた。
更に数十メートル先で、犬のぬいぐるみが猫のぬいぐるみを解体している。切り離された腕が、真子の眼前に飛んでくる。切断面からは血のように真っ赤なオイルが滴り落ち、神経のように細いコードがトカゲの尻尾のように蠢いていた。真子は絶句し、恐怖する。
「殺される」、そう確信した。
この場所から逃れるべく、恐る恐る右手を操縦桿に伸ばす。それに指が触れた瞬間、真子の身体に電気のような衝撃が走った。再び気を失いかけた時、真子は得も言われぬ強烈な欲求を感じた。
それは底無しの、肉なるものへの飢えだった
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