第二章 理由

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 普段通りの一日を終え、家路につく真子。淡い期待を捨てきれず、初めて亜希と出会った公園に寄り道する。当然、そこに彼女の姿はない。  亜希が居なくなった後も、子ども達は楽しそうに駆け回り、保護者達は輪になって談笑している。しかしその中に、真子は異質な存在を見つけた。  眼鏡をかけた、理知的な雰囲気を醸し出す長髪の女性。彼女は視線に気付くや否や読書を中断して立ち上がり、真子の元に歩み寄る。蛇に睨まれた蛙のように、何故かその場から離れることが出来なかった。 「こんにちは。あなたが熊田真子さん?」 「は、はい」  おずおずと返答する。何故自分の名前を知っているのか。もしかしたら、亜希の友人かもしれない。一瞬、恐怖の中に淡い期待が産まれる。 「昨日の戦い、とても良いものでした」 「えっ?」  耳を疑う。この女性は真子が見た夢の事を知っている。いや、それは夢ではなく事実だったのだ。受け止めきれず、硬直する真子に向かって彼女はこう続けた。 「心配しないで、悪いようにはしません。今のあなたにどうしても伝えたいことがあって、ここで待っていたんです。亜希さんの事、探していたんですよね」 「あなたは……?」 「カンナ、十番目です」 「十番目?」  何の話だろうか。真子には全く理解できなかった。 「とにかく向こうでお話ししましょう。さあ」 「あっ」  カンナに手を引かれ、公園の端へと連れていかれる。やがて人気のない樹林の中に辿り着いた。
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