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「連れてきましたよ。美依さん」
カンナがそう呼ぶと、背後からもう一人の少女が歩み寄ってきた。美依というらしいその少女は、セーラー服に身を包み、学校鞄を肩にかけて不機嫌そうに立っていた。
「あんた、何が目的? その子は?」
「この子は熊田真子さん。あなたと同じ、ファンシー乗りです。それで、目的はというと」
美依が殺意を秘めた鋭い目つきで睨む。
「あなた方と、フェアに戦う事です。そのために、あなたと真子さんを引き合わせました」
ファンシー乗り? 戦い? 昨日の出来事と関連しているのだろうが、真子には自体が全く掴めない。
「馬鹿にしてんの? ならここで、殺してやってもいいけど」
じりじりと詰め寄る美依。
「よしましょう。生身の私達は殺せません。殺すなら、電子の身体で、『ファンシー』でなきゃ」
しばらくの間、睨み合いが続いた。その沈黙を破るかのようにカンナが肩をすくめ、軽い口調で切り出した。
「どうやら私、嫌われてるみたいですね。では私はこれで失礼、詳しい事はあなたが直接、真子さんに伝えてください」
「待て!」
背後から殴り掛かる美依。しかしあたかも背中に目があるかのように、あらかじめ攻撃を予測していたかのようにその拳は躱されてしまう。美依は体勢を崩し、倒れ込んだ。
「そうだ真子さん。一つ言い忘れていました」
振り向きざまに微笑を浮かべながら、カンナはこう言った。
「えっ」
「亜希さんにまた会いたいのなら、戦い続けなさい。それでは」
カンナの姿が見えなくなると、美依が体についた土を払いながら真子に話しかけた。
「かっこ悪いとこ、見せちゃったかな」
「えっと、美依さん、でしたっけ」
「そ、宮尾美依。アンタと同じで、アイツらと戦ってる」
「あの、戦いって、どういう事ですか。それにあの人は」
戸惑う真子に、美依はむすっと表情で返答する。
「どういう事も何も、戦いは戦いだよ。昨日の夜見たへんな夢、アレの事。昨日は助けてくれて、ありがと」
「やっぱり……」
うつむいてスカートの裾を握りしめる。やはり昨日の出来事は現実で、実際に自分は人を殺したのだと、真子は今度こそ思い知らされた。
「あいつはもう帰っちゃったし、言われたとおりにするのも癪だけど、説明しなきゃね。あいつらは灰色の十二人、シンデレラ12。あたしはそいつらと戦ってんの。ちょっと前からね」
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