序章

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 突然、グモルクのコクピット内で敵襲警報が鳴り響く。 「ん、新手?」  モニターを確認する。数十メートル後方に、赤いランドセルを背負ったテディベアが立っていた。そしてそれは、先程千切って放り投げたクロ助の腕を、まるで菓子のように頬張っていた。  「や、流石に食べはしなかったな……」    ノベンバは冷や汗をかきながら、美依を放置しテディベアの方へ機体を向ける。そのテディベアは腕を食べ終えると、物足りなさそうなうめき声を出し、彼女の方を向いた。    その目は獲物を、血肉を求める獣の目をしていた。 「おっ、何か面白くなってきたじゃん」 「何者でしょうか、あのクマ型ファンシー」 「可愛い! あの子ウチに呼ばない?」  大小様々のソファとベッド以外に、ほとんど何もない真っ白な部屋。色とりどりのパジャマに身を包んだ少女達が、巨大なモニターを通して観戦している。ガラス窓の彼方には水の星、地球が青々と輝いていた。  彼女らが身を置くのは、愛を司る衛星「モンデンキント」。それは誰に見られるともなく虚しい輝きを放ち、孤独に軌道上を周回する。そこで繰り広げられる戦いを知る者は、彼女らを除いて誰も居ない。
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