勘違いヤきチョコレート

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勘違いヤきチョコレート

「はぁはぁっ……」 (なんで、今日に限って朝から呼び出すのよ!)  かなり唐突だが、今、私はとても急いでいた。私の住んでいる町は、お世辞にも『都会』とは言えない。  さっきから駆け抜けているこの道も、残念ながら未だにコンクリート整備は行き渡っていない。  そして、見渡すと山も緑も多く、山を下ればすぐに田んぼが広がる。その上、盆地で夏は湿気で暑く、冬には大量の雪が降る。 「はぁはぁ」 (ここだよね?)  そんな自然に囲まれたこの町が私は大好きだ。そして、この町に最近、『お店』が新しく出来た。 「…………」 (合って……いるよね?)  一応、確認はしているが、やはり不安になってしまう。それくらい不思議な『場所』に建っていた。 (でも、本当になんでこんな山の入り口に建っているんだろう?) 「……あれ?」 (なんだろう。あれは、自転車?)  目に入ったのは、1台の自転車だった。確かに、自転車で来る人がいてもおかしい話ではない。  だが、ここまでの道のりは決して楽ではなく、かなりのデコボコした道が多かった。 (なんか彼の自転車に似ているような……。って、それどころじゃない)  実は私には、もう一つ不安があった。  そうこのお店は、こんな田舎で売る理由が分からない。それほど珍しく「チョコレート」を専門に扱っていた。  しかし、このお店は「売っている場所」や「チョコレートを売っている」事以外にもかなり変わっており、そのとある理由から閉店する時間がかなり早いのだ。 (あっ!)  どうしようとウロウロしていると、お店から1人の従業員らしき人が出てきた。そして、その人は看板を折りたたもうと看板を覗き込む様にしていた。
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