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「はい。どうぞ」
「あっ、ありがとうございます」
その人は、私の前に差し出した。一礼して、私はそのコップを見た。その中身は、チョコレートの様にとても甘い香りがした。
一口飲むと、甘そうと思った見た目以上にかなり甘かった。しかし、口にするには甘すぎるなどという甘さではなく、優しい甘みが口の中に広がった。
(あっ、美味しい……じゃなくて!)
「あの」
「ん?」
「言葉遣いが……」
「えっ、ああ。ごめんなさい。今、気が付いたわ。不愉快な思いをさせたなら……」
「いえ、そんな事はないです。それよりも、なんで私をお店に?」
「なんで……って、あなたがそこまで欲しがっているのなら作ろうかな? と思っただけよ。それに……」
その人は、まるで私の表情を観察する様に自分の顔を近づけた。
「あなたが言った『おうえんしたい』って、スポーツとかの類じゃないわね」
「っ!」
「その反応は当たりって事……かしら?」
まるで私の表情を見て見透かし、そう断言する様に言ったその人の言葉に私は思わず驚いた。
「……まるで私がここに来た理由を悟っている様ですね。なぜ、そう思うんですか?」
「そうねぇ、1つはあなたがどうしても『今日』欲しいと言った事と……」
しかし、このままその人の言葉を飲み込むのは、なぜか自分の中で無性に負けた気がしてしまい、咄嗟にそこまで至る理由を聞いている自分がいた。
「あなたが『彼をおうえんしたい』って言った言葉とその顔……かしら?」
「…………」
「最初はどうしても『今日』欲しいという事は、大会等が近いからだと思っていたけど」
確かに、この人の言う通りだ。大会の日程など色々な都合はあると思うが、「今日どうしても!」という話であれば、その大会などは今日もしくは日曜日という事になる。
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