2人が本棚に入れています
本棚に追加
私は、まだ1歳にも満たない頃に起きた『マンション火災』に巻き込まれた。その時、私は母に守られ、無事だった。
しかし、私を守った母はその後、亡くなってしまった。元々、家族と呼べる人は母しか居なかった私は、孤児院に預けられ、育った。そんな私と仲良くしてくれたのが、『彼』だった。
「私のいた孤児院の子供たちは、みんな大きな子たちで、なぜ自分がここにいるのか悟っている子が多かったんです」
(でも……)
「彼は……彼だけは、いつも明るい笑顔だった。でも……」
「そんな『彼』もまた私と似たような境遇だと?」
「そう聞かされたのは、会って間もない頃です。まぁ、お互い似たような……『何か』を感じたのかもしれません」
「……あの」
「あっ、すみません。突然そんな話をされても困りますよね」
「いえ、そうじゃなく……。あの、さっきから聞いていると、その彼は『余命宣告』されたんですよね?」
「そうなんですけど、今日いきなり呼び出されたんです。『外泊許可がでた』って」
「……これで色々合点がいったわ」
「えっ」
「まず結論から言うと、彼は『外泊許可』が出来るほど回復しているわよ」
「どういう?」
私は困惑した様にそう言ったのだが……、なぜかその人は気まずそうに私から視線を反らした。
「そういった『許可』は医師に確認が必要なのよ。少なくても、『余命宣告』されている人は出来ないはずだけど」
「でも、確かに彼は……」
「それは、きちんと治療をしなかったらって話だ」
「えっ」
突然聞こえた『その声』に、思わず目の前の光景を疑った。
その声の主は不機嫌そうに私の前に歩み寄り、気まずそうにしていたその人は、「あはは……」と乾いた笑顔で私たちを見比べていた。
最初のコメントを投稿しよう!