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「それなのに、お前は俺の話を最後まで聞かずに帰っちまったんだよ」
「なっ、なんで悠斗がここに?」
「それはこっちのセリフだ。なんで、華澄がここにいるんだ?」
「そっ、それは!」
私はけんか腰で、『彼』。悠斗に言い返そうとしたが、すぐに言いとどまった。なぜそうしてのか。それは多分、その言葉を口にした後の自分の姿を察したからだった。
「実はね。あなたが来る前に『彼』。悠斗さんがあなたより先にここに自転車で来たのよ」
「……じゃあ」
(やっぱり、あれは悠斗の自転車だったのね)
「それで、あなたと同じ様にここの『チョコレート』を求めて来たと聞かされてね」
「……」
無言のまま私はその人の話を聞いていたが、ふと悠斗の方を見ると気まずそうに舌打ちをしながら私から視線をワザと外した。
「その時は、あなたの事は伏せられていて、詳しい事は分からなかったのだけど、あなたが来て、今の話を聞いて分かったわ」
「なっ、何がですか」
「あなたの……いえ、あなたたちは『今日』出会い、その時の『思い出の味』である『チョコレート』を求めて来たって事がね」
ニコッと可愛らしく笑ったその人の表情は、なぜか少し楽しそうに見えた。
「あっ……あと、1ついい?」
「なんすか?」
「なんですか?」
「あなたたちが探している『ショコラ』を作って渡したのは……あたしよ」
「はっ?」
「えっ?」
その言葉はあまりにも突然で、脈絡なんてモノは一切なくサラッと告げられた……。
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