最高な僕《ばか》

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 電車という名の箱舟に揺られてガタンゴトン。向かう先はいつもの職場なんかじゃァ断じてナイ。毎年この時期は地元に帰ると決めている僕なのさ。フフッ、都会に染まりながらも地元愛を忘れない、それが出来る男がこの僕なのさ。  ん? 何故この時期なのかって? とても良い質問だなシャイボーイ。理由は簡単さ、東京で桜が散り始めるこの時期に、僕の地元じゃ丁度満開の桜が拝めるのさ! 地元に帰れて、お花見が二回も堪能できる……ハァン、我ながらナイスアイディアッすぎるぜッ!!  それに……向こうにいる彼女にも会えるのさ! どうだい羨ましいだろぉぉぉう? 満開の桜を満開の笑顔をくれる愛しい女性と一緒に見れるなんて。  ……あぁっ、大変だ。彼女の事を話したら、猛烈に彼女の姿が見たくなってきてしまった。いつも財布に入れている写真に手を……ダメだダメだ僕ッ! もちつけ僕ッ! 杵と臼を用意しろ、月のウサギとやっちまったなぁな芸人に負けないような最高の餅をついてやるぜえぃ。  気持ちが落ち着いたところで箱舟に持ち込んだブラックな缶のCoffee(スティックシュガー六本入り)をテイスティング。うぅん、このブラックなコイツ(inスティックシュガー六本)のかほりが鼻腔を擽る。このかほりが僕の心に潤いを齎してくれるのさ。都会に呑まれちまったこの僕の乾いた心にね。  そんな時間を堪能しながら箱舟を乗り換え、再び揺られて揺られて。気が付いた時には既に地元へ辿り着いていたのさ。どうして楽しい時間と至福の時というのは、こうアッ――と言う間に過ぎ去ってしまうのだろうか。  それにしても……この空気を感じるのも一年振りか。……違うな、今年の正月も帰ってきてるから三ヶ月振りか。……いや、正月から節分くらいまでこっちにいたし実質二ヶ月振りか。兎にも角にもいつ帰ってきても、懐かしい気持ちでいっぱいだ。  地元凱旋に心を躍らせながら停まっていたタクスィーをゲッツ。運ちゃんに行き先を伝えてレッツラゴウしていくぅ。  それにしてもさ、地元に帰って車に乗ると、無性に窓を開けて風を感じたくなるよな。分かってくれるか愛してるぜお前等ッ。オープンザセサァァァンミッ!!  セサミしたら重度の花粉症を患ってた運ちゃんにこっぴどくやられたんだ。セサミ禁止令が張り出されたんだ。
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