第二十三章 夜空の昏い森

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「そうです。私は気付いて、奨介さんを止めました。奨介さんは、かなり怒っていましたけど、兄が悲しむから犯罪者にはならないで欲しいと言うと、何か決心したようでした」  桂樹が、下を向いていた。  花奈が心配して、幾度か電話を掛けると、奨介は『心配ないよ、頑張っている』とだけ言っていたらしい。 「奨介さんは、美佐さんと協力して何かをしていました」  美佐も絡んでいたということは、未成年では出来なかった事なのかもしれない。 「桂樹、殺されなくて良かったね……」 「全くだね、当時は殺されても良かったけど……さ。今は、生きていて良かったからね。ごめんな、虐めて……」  俺も桂樹も辛い時期だったので、お互い様であろう。  ガラスの容器に入った奨介の手には、指輪が嵌っていた。これは、美雪との関係は無かったと言っている。 「お兄ちゃんは頭がいいのに、周囲が全く見えていません!奨介さんも心配していたように、もう少し、行動を慎んでください!」  花奈にはいつも怒られている。花奈は、見た目が大人しく見えるが結構怖い。 「お兄ちゃん、返事です!」 「はい」  返事をしつつも、貸金庫が気になって、見に行こうとしてしまうのだ。 「奨介……俺に、何を願っていた」  奨介の手に添えられた花は、見ようによっては金城に似ていた。崖に花に、家の位置には赤い実が置いてある。でも赤い実だけではなく、青い実もあった。 「奨介は、金城をどうしようと思っていたの?」  問いかけても返事は来ない。でも、森野が書類を見ながら、唸っていた。 「奨介が、指輪を託しているということは、俺の母親とも話していたということだよね……」  森野の母親は、画家であって景観を愛していた。収入が無かったなどと亭主からは詰られていたが、絵画教室やアトリエの貸し出しなどで全く無かったわけではない。 「俺も金城が田舎のままであって欲しいと願っていた。星をいつまでも見ていたかったからだ。美雪は、金城にリゾートホテルを建設して、沢山の人に来て欲しいと言っていた……」  美雪は庭で花を育てながら、花の多いゆったりとしたホテルを建てる夢を見ていたらしい。 「母さんは、景観を守って欲しいと、俺に託したのか……」  森野も、家や土地を売るつもりはない。俺の理由と異なり、森野は今のままの金城の景色を残す為であった。 「貸金庫を確認して来よう」
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