第二十四章 夜空の昏い森 二

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 採用されて送られて来る人物に比べて、金城の者は外へと流れて行った。健介は、地元に働く場を用意したかったという。 「美佐も、奨介も分かっていなかった……」  奨介は大学進学をするといい、外で働く気でいた。皆が、金城を捨ててゆくようだった。 「美しい景観を守っても、誰も来ない……」  灯台にも港公園にも人はいなかった。 「美雪さん、小春さんを公園に呼んだのは貴方ですよね。あの日、祖母の家にはいなかった」 「……小春は、浩介を健介さんの子供だって指摘したのよ……バレてしまえば、私の計画が出来なくなる」  浩介は、奨介の子供でなければ、奨介の所有する土地が手に入らないのだ。 「美佐さんが協力してくれれば、こんな事にはならなかった……」  それは無理だろう。美雪は、美佐の亭主を寝取ってしまったのだ。そんな女に協力する筈がない。 「私は小春を突き落すふりをして脅そうと思った。小春は臆病な面があって、いつも私の言いなりだったから。でも小春は逃げて崖に行った……」  小春は崖の小路に入り、逃げ切ろうとしたが、鞄が木に引っ掛かっていた。小春は、美雪が追って来るのを見て、鞄を振り切り、勢いで崖から落ちてしまったらしい。 「私は怖くなって、そのまま逃げてしまった……」 「小春さんは、最後まで貴方を庇っていました。事故だったと思います」  どこで道を誤ってしまったのか分からないが、次々と重なり、誤りすら見えなくなってしまった。暗い中を歩いているようで、互いにぶつかっては、離れてゆくのだ。 「これで、終わりにしましょう……」  死んでしまった人は、戻って来ない。過去はやり直せないので、未来に進むしかないのだ。 「……そんな……計画が……」  健介が顔を押さえて唸っていた。それでも、美佐は奨介を失ってしまったが、健介には浩介が残っている。 「浩介君のために、阿木建設を大きくしてください……」  浩介が健介の子供だと分かっても、奨介の面影を見る。浩介は、奨介の幼い頃によく似ていた。 「……あの土地に、大きなホテルを建設する……」 「でも、それでは廃れるだけなのですよ。リゾートホテルの画一的なサービスは、どこでも同じサービスを受けられる安心感はありますが、それだけなのです」  画一は数回で飽きられて、人は新しいサービスを探してゆく。
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