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プロローグ
「なんだよアイツ! ほんと……なんなんだよ!」
夜の校舎を必死で走り回っていた。
荒い息と激しい足音だけが壁に反射され響く。横目で後ろを見るが、アイツの姿はない。今のところは。
「俺なんかしたか!? 意味分からんのだが!」
その時突然、目の前の壁が内側に向け爆発音と共に弾け飛んだ。
「……ッ!」
埃が舞い視界を遮り、立ち止まった足元には細かい破片が降り注ぐ。
そして煙の向こうから、ひたり、ひたりと近付く足音が一つ。
「――……あまり、手間をかけさせないでくれないか?」
透き通るように美しく、それでいて超絶偉そうな声が響く。
「貴様がなぜ反撃をしないのか分からないが……だとしても、手を抜くつもりはない」
壁の風穴から夜風が吹き込み、煙をさらっていく。クリアになった景色の中に、アイツはいた。
あざやかな長い金髪は靡き、月明かりは色白の肌を照らす。赤い瞳と整った顔立ちは引き締められ、鋭い眼光は俺を射貫いていた。
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