5人が本棚に入れています
本棚に追加
そして一際目立つのは、彼女が握る一本の剣。そう、剣である。白い両刃の刀身は鈍く輝き、身の丈と同じくらいあろうかという巨大な剣であったが、彼女はまるで枝を振るうかのように軽々と持ち歩いていた。
「そろそろ終わりにしようか。この騒ぎで、もうすぐ人が駆けつけてくるかもしれないしな……」
そろそろ終わりに、というのは、この不毛な鬼ごっこについてだろうか。
さっきから殺意剥き出しなところを見ると……つまりは、そろそろ殺す、と……。
「冗談じゃねえよぉぉぉぉ!」
彼女に背を向け駆け出す。だが彼女は見逃してはくれない。
「逃がすか――ッ!」
彼女は手から光の波動を放つ。光は俺を追い越し天井を撃ち抜くと、瓦礫が崩落し進路を防ぐ。
呆然とその光景を見つめていると、奴の声が。
「……これで逃げ道はなくなったな」
ビクリと体が震えた。
おそるおそる振り返ると、彼女は剣先を俺に向けながら、じりじりと距離を詰め始めていた。
「……お前、何なんだよ……」
絞り出すように出した俺の質問に、彼女――神代那由多は笑みを浮かべる。
「知れたことを……私は、勇者だ」
真顔でふざけたことをほざいた神代は跳び上がる。
「貴様との因縁もこれまでだ! 魔王!」
そして彼女は、構えた大剣を遠慮抜きで振り抜いたのだった――。
最初のコメントを投稿しよう!