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『本気で勇者を自称するのなら心療内科をオススメする。』
春風と共に退屈を極める春休みは終わりを告げ、高校生活シーズン2が始まっていた。
咲き誇る満開の桜は花びらを舞い散らせ、視界に広がる鮮やかなスカイブルーの景色に色を添える。これは見事進級を果たした俺への祝福なのかもしれない。ナイス演出だ、桜くん。
ともあれ、シーズン2が始まったとて、何かが劇的に変わることなどありはしない。
すっかり通いなれた通学路に真新しさなど皆無であり、けたたましく音を響かせる工事も、よぼよぼで縁側に座るじいさんも、猛烈な勢いで通過する車も、ありきたりな毎日の1コマでしかなかった。
別に変化を求めちゃいない。俺の座右の銘は『人生ほどほど』であり、無駄に煌びやかで大それた生活なんてものは身を滅ぼすことを理解しているつもりだ。つもりなだけだが。
それでも、なんかちょーっとでも変わってくれたらなー、楽しいんだけどなー、などという受動的希望的観測を密やかに、そして卑しくも抱いてしまっている自分を否定できないのは、偏に、若さゆえの悲哀なのかもしれん。
だが残念ながら、変化とは、自ら進んで求める者の元にしか訪れないもののようだ。全ての事象は踏み出す一歩から始まるわけで、それを向こうからポーンと飛んで来るのを期待するのは、おこがましいと凄まじいバッシングを受けても仕方ないだろう。
かといってその一歩というのはとても重く、そして中々の度胸が必要であることもまた事実である。そんな度胸など俺にはないし、ましてや、どの方向に歩を進めればいいかなんて知る由もない。
故に、こうして風の向くまま波に揺られるまま、惰性というサブタイトルが付いたような毎日を、欠伸を添えつつ、ただただ淡々とこなすしかないのであった。
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