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「……まあ聞けよ。魔王ってのは畏怖の象徴だろ? お前が俺を魔王魔王と呼ぶことで、聞いた奴はどう思う?」
「それは……」
そう、バカだと思うはずだ。……という真実はこの際伏せておく。
「……おそらく不安になることだろう。だからここは、余計な混乱を招かないためにも、俺のことは名前で呼べ。いいな?」
「……わかった」
神代は深く頷いた。
なるほど、真実はどうあれ、こいつは勇者なんだ。
民のことを思い、民のために魔王を討伐しようとしている。その御大層な正義の心を利用すれば、こいつをコントロールすることも可能かもしれん。
なんというクズ野郎、俺。
「では悠斗。これでいいか?」
「あー……まあ、いいか」
正直なところ、神代にファーストネームで呼ばれると少しこそばゆい。
外見が文句なしに良いからか、すげえ特別感がある。
「……悠斗ぉ……」
突然背後から亡者の声が聞こえた。
背後を見ると、そこには、目を血走らせたネギが。
「お、おお……ネギか……」
「ちょっと聞かせてもらおうか……ことの経緯をな……」
「経緯?」
ネギは俺に顔をずいっと近寄らせる。
「なぜ、お前が、あの神代さんと、二人で、歩いているん、だ?」
「な、なぜって言われてもな……」
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