『強戦士というより狂戦士とか凶戦士って部類だと思われる。』

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 放課後、落胆しながらとぼとぼと道を歩く。  パンパンのスポーツバッグを肩にかけているせいか、踏み出す足は凄まじく重い。 「さっさと歩け悠斗」  神代は、およそ人の温もりなど皆無に等しい声で俺を煽る。 「……なんか、身売りされた気分だ……」 「人聞きの悪いことを言うな。私はただ、ご両親に許可を得ただけだ」 「許可ぁ? あれは許可っていうか、洗脳に近い気がするけどな……」  遡ること数時前、学校終わりにも当然のように神代は俺に付きまとい、マイホームへと押し掛けた。  父さんと母さんは神代を見て、哀しくも「愚息が凄まじく可愛い彼女を連れて来やがった!」的な勘違いをし、神代をのこのこ室内に招き入れる。  そして神代から告げられる、許可申請というより決定事項通達。 「悠斗は私の家に住ませる」  そこに「よろしいですか?」とか、「許可してください」とかいう確認工程など微塵もなく、両親のリアル過ぎる「ふぁ??」という顔を、生まれてこの方初めて見た気がする。  当然父さんと母さんは反論した! 「まだ学生身分で同居など、愚の骨頂!」 「若さ故の過ちでは済まされないこともある!」  熱く、そして強く語る両親。  だが神代は、突然俺を家の外に出した。そして数分後呼ばれた時には、両親は気持ち悪いくらいニッコニコの笑顔を浮かべ、俺に「ご迷惑をかけないようにしなさい」と言い出していた。  いったい何があったのかは定かではない。  定かではない、が、俺は確かに見た。  窓から溢れる、虹色の光を……。  あくまでも予想だが、神代の奴は魔法などと呼ばれるもので両親を強制的に納得させたのだろう。勇者が罪のない一般ピーポーに魔法を使い、言論を封殺するなど掟破りも甚だしい。勇ましい者というより、浅ましい者ではないか。  だが結果として、両親の許可が出てしまった。  法律上どうなのってところはあるが、お巡りさんが来たところで、おそらく神代は虹色の光をもってして、たちまち「合法! 問題なし!」としてしまうことだろう。  勇者の力とは、かくも恐ろしいもののようだ。
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